どっちが正しい? 英語の「百聞は一見に如かず」

2021年3月3日

視覚情報と聴覚情報

A picture is worth a thousand words.

「1枚の絵は1000もの言葉と同じ価値がある」
第一文型
主語:a picture
動詞:is
修飾句:worth a thousand words

Seeing is believing.
「(自分で実際に)目にすることは信じることになる」
第二文型
主語:seeing
動詞:is
修飾句:believing

見ることと聞くことに関する二つのことわざ"A picture is worth a thousand words." “Seeing is believing."

日本語には「百聞は一見に如かず」ということわざがあります。英語の場合これに似たことわざとして、

A picture is worth a thousand words.

というものと、

Seeing is believing.

ということわざがあります。

A picture is worth a thousand words.の意味とは
英語のことわざの本などを見ていると、このことわざの意味は、
「何か物事を説明するのにたくさんの言葉を使うより一枚の絵を見せた方が分かりやすい」というものです。

視覚情報と聴覚情報

一方で、
Seeing is believing.ということわざは
「見ること(実際に出会うこと)は信じることにつながる」という意味です。

どちらも第二文型でできていますが、A picture ~ の方はworthという特別な使い方をする単語が使われています。

worthという単語の使い方

worthは日本語に訳すなら「価値」という意味の単語です。

名詞:価値・重要性・値打ち
という意味で使うほか、
前置詞としても使うことができます。

worthという単語の使い方
名詞:価値・重要性・値打ち
前置詞:(後ろに名詞をとって)~する価値がある
Ex. This watch is worth 100,000 yen.
(後ろに動名詞の~ing形をとって)~する価値がある
Ex. That book is worth reading.

どちらの使い方もworthを名詞だと認識していると非常に不自然な文の形に感じますが、atやofなどの仲間だと考えると納得のいく形に見えます。

A picture is worth a thousand words.
はworthの後ろに名詞をとっているため、「~の価値がある」となり、文全体として
「絵というものは1000もの言葉と同じ価値がある」という意味になるのです。

日本語の「百聞は一見に如かず」の意味とは

百聞とは何度も繰り返し聞くこと、一見とは一度見ること、を表しています。
このことわざの例の場合、考えなければならないのは、百聞と一見がなんの比喩になっているのか、ということです。

もともとのことわざの意味は、

一見 → 一度自分で足を運んでそれを体験すること
百聞 → 何度も他人から伝聞情報として仕入れること

この二つを比較しています。視覚情報と聴覚情報という違いではなく、直接的な体験は他人から聞いた伝聞情報よりもはるかに知識として優れているということを表したことわざなのです。

「百聞は一見に如かず」に適した英語は”Seeing is believing.”

そのため、日本語の「百聞は一見に如かず」ということわざは「実際に体験した情報が一番強い」という意味です。
その意味から考えると、英語に訳したときに適切なことわざは、Seeing is believing.の方になるのです。

A picture is worth a thousand words.はあくまで図表などの視覚情報と、言語を通じた情報の比較をしているのであり、実体験か伝聞かという違いについて話しているわけではないのです。

まとめ

現在では情報技術が発達し、自宅にいるまま非常に多くのことを知ることができます。スマートフォンとインターネットがあれば、全く行ったことのない場所の風景を自由に見ることができます。
また自分ではなかなか調べようのない知識などもネット上で調べることで簡単に知ることができるでしょう。
しかし、その情報というのはそのページの書き手がいる以上、誰かの伝聞情報なのです。何か対象の物事に対して、そのページの製作者の目と感情を通じて紡ぎだされた情報に過ぎません。
そこには何か意図があり、その書き手というフィルターを必ず通過している情報なのです。

最も信用できる情報というのは自分が生で感じ五感で体験した情報です。
たとえばある勉強法が非常に有効だと言われていたとします。しかし、その勉強法を実際に自分でやってみるとあまり効率の良い方法ではないこともあります。
ある参考書が非常にわかりやすいと言われていたとします。しかし、それが今の自分にとって適切なレベルのものであるとは限りません。
情報が過剰に流通している現在。最も大切なのはその情報を仕入れたあとで自分で行動をし、そこから感じた自分の実体験をどれだけ活かせるかではないでしょうか。



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