たぶん日本一わかりやすい英語の「部分否定・全否定」

2021年4月30日

英文法の否定を解説

英語の「否定」を「数学の式」で考える

英語の文法を学習していると終盤に出てくることの多い「否定」という単元。何気なく聞いていると理解しているようですが、実際はきちんと理解できている生徒は非常に少ないです。ここでは、そんな「否定」の単元を、数式を使って説明していきます。

部分否定と全否定のポイント
  • 「ない(no)」と「じゃない(not)」と区別
  • 「じゃない(not)」は数学の「より少ない(<)」と「ではない(≠)」だと考える
  • 「ない(no)」は数学の「はゼロ(=0)」だと考える

noとnotの違い

no 形容詞 ~がない 存在しない
not 副詞 ~じゃない その条件は違う

こう文法的に説明したとしてもなかなかイメージするのは難しいでしょう。そのためこう考えます。

no 名詞の前にしか付けられない 「不在・無・ゼロ」
not 色々なものの前に付けられる 「否定・非・違う」

数学の表現で説明するのであれば、noは=0
notは≠もしくは<
と表現できます。

notの対象となるものによる意味の違い

noが形容詞として多くの場合、後ろに名詞をとるのに対して、notは幅広く色々なものをとることができます。その色々なものは大きく分けて2種類あります。
その2種類というのは「形容詞や副詞がない場合」と「形容詞や副詞がある場合」です。

notの後ろにくる要素に「形容詞や副詞がない場合」

後ろに「形容詞や副詞がない場合」、その部分に対してnotは≠(ノットイコール)の役割を果たします。
いくつか例を挙げてみましょう。

This vegetable is not a carrot.
this vegetable ≠ a carrot
この野菜は人参ではない。

I am not Japanese.
I ≠ Japanese
わたしは日本人ではない。

I do not like swimming.
I ≠ like swimming
わたしは水泳が好きではない。

ニンジンを否定する図

notの後ろにくる要素に「形容詞や副詞がある場合」

一方で、形容詞や副詞がある場合にはnotは<(小なり)の役割を果たします。

The T-shits is not expensive.
the T-shits < expensive
そのTシャツは普通か安い。
=そのTシャツは高くない

I can not run fast.
I can run < fast
わたしは走ることができるが早くはない
=わたしは走ることができるが普通か遅い
=わたしは早く走ることができない

The water is not hot.
the water < hot
その水は熱いというほどではない
=その水は普通か冷たい
=その水は熱くはない

I don’t like baseball very much.
I like baseball < very much
わたしは野球がとても好きというわけではない
=わたしは野球がちょっと好きか普通に好きか、むしろ嫌い
※「とても好きではない」は「とても嫌い」ではないことに注意!!

notを使うふたつのケースを比較してみる

度合を表すことができる「形容詞・副詞」の有無を比較してみると、
I cannot speak English.
I ≠ can speak English
わたしは英語をしゃべることができない

と、何も様子や度合が書かれていない場合には完全に英語を話すことを否定しているのに対して、

I cannot speak English well.
I can speak English < well
わたしは英語を上手に話せない。
=話すことはできるけど、普通か下手

上手という度合がある場合には、「上手であること」は否定していますが、英語を話すこと自体は否定していません。

この二種類のnotの違いを理解すると非常に簡単に全体否定と部分否定を理解することができます。

全体否定と部分否定とは

全体否定とは、その内容に関して全て否定することです。つまりは0ということになります。
一方で部分否定というのは、一部は否定していますが、0であるとは言っていません。

例えばある映画監督が10本映画を作っていたとします。その場合、全体否定と部分否定は次のようになります。

全体否定(好きな映画は0本)

I don’t like any films that he has made.
彼が作った映画はひとつも好きではない
=彼の作った映画は好きではない

部分否定(好きな映画は1~9本)

I don’t like all films that he has made.
彼が作った映画の全てが好きなわけではない
=彼の作った映画の中に好きなものもある

全体否定と部分否定そのものの意味は分かったけれど、それをどう使ってい良いか分からないという人もいるでしょう。

全体否定になる条件と部分否定になる条件を分けると次のようになります。

全体否定になる条件

そもそも様子や度合を表す「形容詞・副詞」が文の中に含まれていないとき
・not any ~が使われているとき
・no ~が使われているとき
・none が使われているとき
・not ~ at allが使われているとき

部分否定になる条件

様子や度合を表す「形容詞・副詞」が文の中に含まれているとき
・everyやall、always、necessarilyなど全てを表す単語が使われているとき※ allのときは「at all」なのか「名詞の前についているall」なのかに注意!!

対象のものが2つなのか3つなのかによって表現が変わる

英語の場合、その対象のものが2つなのか3つなのかによって、表現が変わります。
2つの場合にはboth、3つ以上の場合にはallを使います。

全部で2つのときに使う表現とnotを付けたときの意味

both 2/2 (2つあるうちの)両方
either 1/2 (2つあるうちの)どちらか片方
neither 0/2 (2つあるうちの)どちらも違う

これらの表現にそれぞれnotを付けると次のようになります。

not + both 2未満/2 (2つあるうちの)1か0(普通は1)
not + either 1未満/2 (2つあるうちの)0

全部で2個のものの否定の図

全部で2個のものの否定

210
bothnot both
eithernot either
neither

このように、notが付いたときには、もとの数字未満と考えればいいのです。

全部で3つ以上のときの表現とnotを付けたときの意味

ここではイメージを分かりやすくするために、分母の部分を仮に10で説明します。

all/every 10/10
some 2~4/10
※ someは若干の数を表すため、半分を超えたら普通別の表現をする
any 1/10
a 1/10
no 0/10

これらの表現にそれぞれnotを付けると次のようになります。

not + all/every 0~9/10
※ 全部を否定しているので大抵は全部に近い
not + some 0~3/10
※ 若干を否定しているので大抵はない、また表現としてはあまり使わない
not + any 0/10
not + a 0/10

元のnotがついていないものと比較すると、分子の数が1減っているだけだということがわかります。
つまり、部分否定や完全否定を考えるときには元の数字の意味を覚えておいて、それよりも少ないと考えればいいのです。

全部で3以上のものの否定の図(ただし全部で10の場合)

全部で3個以上のものの否定

107~95~62~410
all /
every
not all /
not every
not
at all
somenot some
anynot any
anot a
no

まとめと問題

日本語でもそうですが「否定」という表現は「対義」と勘違いされやすい分野です。

「暑い」の「否定」は「暑くない」ですが
「暑い」の「対義語」は「寒い」です。

意味としては、「寒い」「涼しい」「ちょうどいい」「暖かい」を含む「暑くない」の方が広くなります。そのことをきちんと意識したうえで「否定」を学習していくことで正しい表現がどのようなものなのかをきちんと理解することができます。

ある程度理解できた! という人は是非次の問題に挑戦してみよう!



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